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とある漫画について(勧めると言っている)


こんばんは、chiakiです。
今年もまたアドベントカレンダーで執筆できるこの機会に感謝を。

うれしーわホント

ホントうれしーわ



関係ないけど天丼って美味しいですよね、好きです。



去年はとある漫画家について熱く語らせていただきましたが、
今年はとある1つの漫画について緩く語らせてもらいます。




私が「コミック百合姫」を定期購読しているのはすでに知られていることですが、
実のところ私は百合作品をそう好きではありません。


と、言うのも始めは

「ハンバーグは美味しい、カレーも美味しい。ではハンバーグとカレーを合わせたらもっと美味しいに決まっている」

という文言に基づいて

「可愛い女の子と可愛い女の子が合わさったらそれはもっと可愛いに決まっている」

なんて下らない論拠で足を踏み入れた分野でしたが、百合作品なんて言うものはなんてことはない、ただの記号であり観測者がいて成り立つわけで、なんなら二足の靴だってそれは百合足りえるというのは偉い人の言葉であり___

意味不明な供述になってきたので要約しますね。


女の子二人がいれば「百合だ」と括り持て囃す時代で、自分が求めているものが女の子の可愛さではなく、恋愛感情における人間の葛藤や醜さ、美しさや尊さであると気付いたという話です。


女だけが登場する作品(きららタイトルが良い例)を見ていて「男は要らない」と宣う人間がそれを百合作品だと呼ぶのなら
私はそれを好きとは言わない。

恋愛感情における―――を求めるならそれは別になんでもいいので
だから私は、少女漫画もラブコメも好んで読み
とりわけ同性愛を用いた作品は「性」を取っ払ったより純度の高い恋愛を見せてくれる。

だから読んでいる、そういう理由ですね。


どうでもいい余談

BLもGLも同性愛であるのに性の取り扱いに差が大きすぎるのは何故か
という疑問を有識者達に投げかけたところ
「BLの歴史は古いから、GLは進んでない」「BLは入れる方と入れられる方で白黒ハッキリつくから」
などなど面白い意見が聞けました。
また、少年向け恋愛では安直なエロに走るのに少女向けだと恋の過程を重視する逆転現象が起きる
なんて面白い考察も起こったり、楽しかったです。


ちなみに、コミック百合姫の読者層は女性が7割だと公式で発表されています。
多いと思いますよね?私も驚きました。
しかもその中でもBLも読む方が多いというのだから、私のような人間は他にも居るんだなと思いました。



前置きが長くなってしまいすみません。

なぜこんな話をしたのかというと、私が今回勧める漫画が所謂「百合作品」でありながら
「この漫画は百合作品の枠を超えている」と評されているからです。

これは、安易な百合を求めて読んだ読者が
「あ、これそういうんじゃないわ」と気づいた声が漏れ出たものなのだと私は勝手に思っています。


私も最初はただ有名な百合作品だから読んでみよう、という軽い気持ちで手に取りました。
今では続きが気になって仕方がない漫画の一つになっています。セリフの1つ1つに泣きそうになりながら。
多くの人に触れてもらいたいと純粋に思えたこの漫画について語らせていただきます。








がて君になる」という漫画についてです。
作者は仲谷鳰(なかたににお)、コミック雑誌の電撃大王にて連載中、2018/12/04現在で6巻まで発行されています。

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すでに有名な作品でもあるので聞き覚えのある方は多いと思います。
また、今年の10月からアニメも始まり今も放映中です。

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アニメも素晴らしい出来なので、興味がある方は原作とアニメどちらから入ってもこの作品を楽しめると思います。
ホントに出来が良いです、原作と比べて大なりイコールと言えるくらいには。
原作に忠実でありながら無理のないオリジナル要素、わかりやすい脚本編集、アニメならではの演出。
どこをとっても素晴らしいものになってます。



前回の漫画紹介の際はネタバレは控えませんでしたが、もしかしたら(こんな記事に感化される人がいるかはわからんが)これから読もうという人が居るかもしれないので、今回はまず作品の魅力や物語のあらすじを軽く紹介して、後に詳しく私個人の考察をしていきたいと思います(たぶんそこそこ長くなります、覚悟決めろ?)

なので作品が気になる人はいい感じの所で切ってください。
もし作品を見た後でこの記事を読み返してもらえたらそれはもう感無量だなって。




いちいち前置きが長くなる。


物語のあらすじから


物語は主人公である小糸侑(こいとゆう)のモノローグから始まる。

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高校一年生になった侑は、仲の良かった男子から中学卒業の際に受けた告白に返事ができないままでいた。

高校生活も一か月が経とうとした頃、参加する部活に悩む侑は担任から生徒会の手伝いを持ち掛けられ、生徒会室に1人で向かう道中、男女の告白の場面に遭遇する。
「ごめんね、君とは付き合わない」
「私はただ、誰に告白されても付き合うつもりないだけだから」
そう応えるのは、生徒会役員である七海燈子(ななみとうこ)だった。

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才色兼備という言葉が似合う燈子は今まで何度も告白を受けており、中には女子からのものもあったとか。
それらを全て断り
「だって今まで、好きって言われてどきどきしたことないもの」
と語る燈子に、侑は共感を抱く。


彼女になら打ち明けられるかもしれないと考えた侑は、燈子にある相談をする。

「彼のことは好きです、でも断ろうと思ってる」
「わたしには、特別って気持ちがわからないんです」

恋愛の話が好きな友人たちにはできない相談。
特別な意味での「好き」という感情の欠落。
それ故に告白に返事ができずにいたこと、断る自分への罪悪感を打ち明ける。

「自分がおかしいのかなって、思っちゃうよね」

共感した燈子に勇気づけられ、その場で件の男子へ電話で応え終えた侑だったが
燈子の様子がおかしいことに気づき尋ねると、燈子から衝撃的な言葉を受ける

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「私、君のこと好きになりそう」


あらすじ終わり。

あらすじというか、1話の全容ですね。
いやあ衝撃的、だってそんな気配さらさら無かったもの。かっこいい先輩だなぁ程度にしか読者も侑も思っていなかった流れなので。
侑の抱えるものは、冒頭のモノローグから示唆されていた通り、「恋愛感情」を持たないということだった。
燈子は他人からの告白に心を動かされたことが無いと言うが、この最後の台詞。
一緒だと思えた二人は違ったんですね。
補足すると先輩は嘘を言っていたわけではないです、急に芽生えた感情に本人が一番動揺してますからね。



「枠を超えている」と評されている、その理由はおそらく作者である仲谷鳰による卓越した心理描写、台詞回しにあると思います。
恋愛漫画というものは往々にして登場人物のモノローグや会話だけで進行していくものですが、この作品ではそれらが洗練されており、短い文章とお話の中で多くの情報量が飛び交います。
いうなれば現国の問題にできそうな感じですね。「このAの台詞に込められた意味を答えよ」とか作れそう。
これもう文学だろと言いたい。

個人的に思うことですが、登場人物たちの人間としての不完全さが好きです。
恋愛漫画、特にリアル志向のものとなると人間関係がドロドロしがち、というのはよく言われることですが、この作品ではマイナス感情が他人に向けられることは殆どないです。悪意を持つ人物が皆無なのでキャラクター達は常に自分の中の葛藤と戦っています。
「自分を変えたい」
「こんな自分は卑怯だろうか」
「自分には何もない」
そんなモノローグがキャラクターの行動原理であり、物語の主軸になっています。



かなり雑にはなりましたが、あらすじと魅力については以上です。
眠い頭と語彙力の無さが相まって残念な感じに仕上がってますね。ノッて来ました。


ここから「やがて君になる」がどんな話になるかと言うと
















全部書くわ
(前述の通りここからは全編通しの個人的な解釈パートです、解釈って程でもないけど)





前回の燈子の言葉の真意がわからないまま、侑は生徒会長へ立候補する燈子の推薦責任者を頼まれます(立候補者の次に「私はこの人を推します投票よろしく」と演説する人ですね、懐かしい)
この時点で燈子の侑に対する好感度はストップ高と言っていいほど限界振りきってます。
理由は侑もわからず、読者も知る由もありません。
燈子による周りへの説得や侑に対するごり押しもあってか、侑も内心嫌がりつつ推薦責任者を引き受けます。

引き受けることになった日の帰り道。
「この間のって何だったんですか」「好きになりそうって」

それ聞く???
すげえよ侑は。
描写はもちろん文章じゃ書き起こせないので説明不足にはなりますが、後のことを踏まえて解説しておくと侑はかなり強メンタルの持ち主です。

「あれは口走っちゃったというか――」
「変な意味じゃないのはわかってますよ、そもそも女同士ですし」

なあなあで終わりそうだな、となる流れですが次の侑の一言で燈子の雰囲気が変わります。

「仮に女同士じゃなくたって私、好きになるとかないですけど」

踏切の音、電車が近づく音、侑へと振り向く燈子
そして

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「私の好きって、こういうことしたい好きだったんだ」
「君といるとどきどきするの、こんな気持ち誰にもなったことなかったのに」

まだ二話目ですよ。
展開が早いですね。
「私の好き」こういうことしたい好き」という表現、いいですよね。
無理やり奪った側が焦ったリアクション、ここから燈子先輩の童貞ムーヴが始まります。(一部読者がそう表現してるだけです)


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翌日、一方的にキスをしたことについて言い訳と謝罪をする燈子だったが、侑は「気にしてません」の一言。
安心する燈子とその一方、侑のモノローグ

ほんとに気にしてないんだよ
女の人で あんな風に突然奪われて 嫌だって思うものじゃない?
もし嫌じゃないのなら もっとどきどきしてもいいんじゃないの?
初めてのキス

何も 感じなかった


読者が違和感を覚える最初のシーンだと思います。
恋愛感情を知らない女の子が先輩との出会いで徐々に変わっていくストーリーだと考えますからね、大抵。

最初の「他人にどきどきしたことない」という燈子の発言を記憶の中で繰り返し、共感を覚えていたはずの侑はモヤモヤした感情のまま選挙活動が進みます。

そして新聞部の取材で2人は写真撮影をするのですが、侑はとある行動で燈子の言葉を確かめようとします。

ここが個人的に作中でも1.2を争うほど好きなシーンです。

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撮影の際に手が触れてたじろぐ燈子の手を掴む侑、その時の燈子の反応を見て侑は――


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あ、この漫画やべーわ

ホントやべーわ

普通の百合作品じゃないなと感じたシーンです。
女の子が手を握って照れる、そこで持つ感情がまず「ずるい」って。
裏切られた気持ちが先行してるんですよ、アクションとリアクション自体はこんなに可愛いのにですよ????
普通じゃない、その描写に頭をガツンとやられました。久々にね。
あと普通に照れてる燈子先輩可愛いです。
当初は恋愛感情を持てない同士だったはずなのに、燈子は「特別」という感情を侑に抱いているんですね。


ここからは少し端折ります。

燈子が侑を好きになった理由は、まさに「侑が誰のことも特別に思えないから」です。
意味が分かりませんよね。だからこの作品が面白いんです。

学校生活では完璧に振舞っていた燈子には、隠してる本心がありました。
周りからの期待や特別視のプレッシャーに押しつぶされそうな燈子を見て、侑は「だから、(他人を特別視しない)私なんだ」と解釈します。侑はここで「私がこの人の傍に居よう」と決心します。選ばれる事は嫌じゃない。キスだって興味はある。必要とされるなら傍にいてあげましょう。
この辺りは、ただ侑のお人よしであって恋愛感情ではないと本人も断言しています。
侑の茨の道の始まり。
だって侑は他人を「好きになりたい」んだもの。


晴れて生徒会長になった燈子、役員となった侑。
ここで物語は文化祭へと目標を移し進行していきます。
この作品はこのように物語の向かう大筋が常に定まっているので読みやすいです。女の子同士の絡みを書くだけだとこうはいきませんからね。時間の流れを書くのが上手い。

あ、すみません。
なんだかこのままだと辛気臭い漫画だと思われそうなので百合っぽいシーンもあるアピールしておきますね。
自分がこの作品のシリアス面ばかり見ている気がしてきました。
ちゃんとてぇてぇところはてぇてぇです。

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暗黒面に話を戻します。

文化祭で生徒会が劇をすることを強く押す燈子であったが、その理由は亡くなった姉の影を追うためでした。
燈子の姉は7年前の生徒会長であり、伝統だった生徒会劇を行う文化祭の前に交通事故で亡くなっていた。
生徒会選挙でも、陰で緊張で震えながらも完璧に立ち振る舞うのは姉のような人間になるためだったのです。

「姉ができなかったことを私がやるの」

重い、重いです先輩。
しかしそこは鋼メンタル小糸侑、地雷原だろうと必死に燈子に語りかけます。
亡くなった血縁のために、その分も生きるというのはよくある話。ただ燈子の行為に関して侑は異を唱えるんですね。

「やめませんか、劇
 私は先輩は先輩のままでいいと思います。
 お姉さんみたいに立派な人になりたいって思うのは、おかしくないしいいことだろうけど
 今の先輩は無理してるでしょう 心配なんです
 そこまでしなくたって そのままの先輩を受け入れてくれる人は 先輩が思うよりいっぱいいるんじゃないかな
 だって―――」
(わたしは本当のあなたを知っていて それでも一緒にいたい 好きになりたい)

「好き」はわからなくても、その対象はあなたであって欲しい。
自分が「好き」だと思えるならそれは燈子先輩だろう、という体で考えてるんですね。
他にどんな言葉をかけられるか自分でも考えてみましたが、内容が内容ですから、触れることすらできないでしょうね。普通なら。

侑の言葉なら届くだろうか、と思いきや

「そんなこと」
「死んでも言われたくない」

意外ッッ!!それは拒絶ッッ!!
ここまでの燈子が侑に対してデレッデレだったこともありここの冷ややかな態度には少し驚きました。
しかしこうして2人の会話を読んでみると「復讐なんて虚しいだけだよ」と復讐者に説得する絵面のように見えますね。糠に釘、暖簾に腕押し。

「劇はやるよ たとえ小糸さんがついてきてくれなくても」

漫画的な表現なのでこれまた文章では伝えづらいのですが、このシーン、燈子と侑は高架橋下の川辺で会話をしています。
そして燈子は川に浮いたブロックの上を遊ぶように彼岸まで渡りながら会話しているんですね。
あまり好きな言葉ではないですが、これは三途の川のメタファーであると確信しています。冗談ではないです。
アイデンティティの死、七海燈子としての死、文化祭と劇が終わった時の行きつく先を示唆しているように見えました。

文量が多いので端折りますが
総括して、燈子が何を思って行動してるのか考察しました

弱い自分も、完璧な自分も、自分じゃない。だから自分を「誰か」として見ない侑だけが燈子にとって特別な存在である
こういうことだと私は解釈しています。
演じなくていい、だから唯一甘えられる侑に頼ってしまってるんですね。


正直この辺りは難解なので、アニメでもここから見なくなった人が多いと聞いています。
自分はむしろ燃え上がりました。
アイデンティティ、好きな言葉です。
ドラゴンクエスト7のキャッチコピーが大好きなのもこの理由です。

結果としてそれでも侑は燈子を説得しようとします。ただ、劇をやめさせるのではなく、一人にさせないために。

「ほんとは寂しいくせに」

「わたしはどっちの先輩のことも好きにならない
 これまでも これからも
 先輩のこと 好きにならないよ」

今初めて何も知らずにこのセリフを読んだら意味が分からないでしょうね。
侑は、先輩のそばにいると決心をしていました。自分が先輩以外に誰が好きになれる、とも
一人にさせないためにひねり出した言葉。

「あなたを好きになりません」(だから傍にいます)
なんて告白が成立するんですよ。


のちに侑は「文化祭の劇が終わったら、七海先輩はお姉さんを追わなくて済むんでしょうか」「先輩は、先輩になれるのかな」と別の上級生と会話しています。

ここでタイトルの「やがて君になる」の意味が1つ明かされるわけです。七海燈子のアイデンティティの形成。



すげーわこの漫画ホント

ホントすげーわ



このあとの会話なんですけどね

「侑 好きだよ」

「はあ ありがとうございます」

「きみはそのままでいてね」

(わたしは変わりたい)

「はい」
 
(なのに嘘をついたのは)

(きっとわたしも 寂しいからだ)


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ここまでで2巻の終わりです。どれだけ濃い内容か少しわかっていただけたら幸いです。

「好きになってはならない恋」の始まりですね。

この侑のモノローグだけですでに切ない切ない。ほんとに涙出るんじゃないかってくらいです。

当たり前なのですがこの漫画は侑と燈子2人だけの世界ではありません。
レギュラー的なメンツは10人以上ちゃんと居ます。
私がこの漫画で楽しんでる部分がメイン2人の駆け引きなので今回はそこばかりになってしまいました。
他の登場人物もみな魅力的です。特に佐伯沙耶香が好きですね。
紹介したいですが更に長くなりそうなので、割愛。


6巻の最後まで書ききるつもりだったのですが、このペースじゃ無理ね。
続編とか書けるだろうか。

by anythingjupiter | 2018-12-05 00:00 | Advent 2018

グレイヴ大好き?


by anythingjupiter